河内先生へのインタビュー ―自分が望む社会を創るための原動力に、自分がなる
2025.06.27 融合学域 先導学類 全ての方向け
今回は河内幾帆先生へインタビューのご協力をいただき、先生の経験や研究の姿勢に加え、融合学域と描いていきたい先生の未来を熱く語ってもらった。
《今回のラインナップ》
- メキシコでの経験
- “学びたい” へのアプローチ
- 融合学域と見たい 未来
1.メキシコでの経験
先生は2009年から2018年の9年間、メキシコの国立大学で経済学部の教授として国内で勤務していた。滞在していた町は麻薬組織による抗争が激化し「世界で最も危険な町」と呼ばれるほど治安が悪化していた。さらに、ジェンダー不平等、貧困、経済の不安定さ、気候変動による干ばつなどの社会問題も日常的に存在していた。こうした状況を先生は、“社会課題を自分ごととして捉えざるを得ない社会で不安定な社会の状況だった。”と語る。しかし、メキシコの人々は互いに信頼し合えるコミュニティを築き、多様な人々が能動的・共創的かつ前向きに問題に取り組んでいたそうだ。そして、小さいながらもイノベーションが自由かつ活発に生まれていることを目の当たりにした。そして、先生はそんなメキシコの人々の生き方は人類の希望になると感じた。
日本に帰国後、地球環境問題に対する日本の取り組みに関する研究を進める中、“このままでは遅すぎる。間に合わない。”という切実な危機感が先生の中で生まれた。現代の日本を取り巻く環境問題や社会課題は、もはや既存の仕組み(法律、制度、経済インセンティブなど)を微調整するだけで解決できる段階を超えている。そこで、先生はより抜本的な社会改革が必要だと感じ、現在は心理学や認知科学の知見も取り入れながら社会構造そのものを再定義することに取り組んでいる。
“なぜ、人は自己破滅的な社会構造を維持し続けてしまうのか”
”意識レベルで改革を起こすには何をすべきなのか”
こうした問いに挑む先生の姿は筆者の心を熱くし、未来がより良い方向に向きそうだと思わせてくれた。
2.“学びたい”へのアプローチ
これを読んでいる皆さんは勉強することが好きだろうか?
では、あなたの周りに熱心に勉強したり、社会活動をしている人はいるだろうか?
そんな彼らは時に“意識高い系”と呼ばれることがある。
この言葉はどこか少し皮肉で冷ややかさを感じる。先生もまた、やる気のある学生がなんとなく悪目立ちしている様子に違和感を抱いていたようだ。そこで、融合学域の発足前から、 “金沢大学ぐるぐるラボ” というオープンな学びの場を創設した。このラボは、学生がやってみたいことをそれぞれ持ち寄り、それらを共に実現したいと願う仲間との架け橋となることを目指している。この仲間は大学生にとどまらず、地域の人、企業、教員(研究者)と心を同じくするなら肩書きや立場は関係ない。一つの大きな輪の中で課題に対し、“ぐるぐると迷いながらみんなで”思考を巡らす。ここでは、誰かに学びを強要されることもない。あなたの中にある学びへの熱意も拒絶もされない。
3.融合学域と見たい未来
前述のメキシコ社会では社会課題に対する当事者意識が強くみられる。一方で、日本社会は当事者意識が希薄かもしれない。これは、社会制度、経済、法律、福祉といった社会構造で守られすぎていて、社会課題との距離を遠く感じている人が多いからなのではないか、と先生は言う。
でも、本当にこのまま受け身でいいのか。
日本にも同様の変化が来ないとは言い切れない。そのとき、慌てていても遅い。だからこそ、教育の現場でその意識に一矢報いるようなアプローチが必要だと先生は感じている。
いま先生が目指すのは“学習する社会”。これはピーター・M・センゲが提唱した“学習する組織”を拡張した構想だ。社会を構成するあらゆるステークホルダー(利害関係者)が情報を共有し、問題に対する解像度を高めながら、お互いに学び合う関係を築いていく。こうした協同的な学習のプロセスを通して、社会課題に対し、より多層的かつ多角的、そして平和的に取り組むエコシステムを構築し、持続可能な改善を実現していくことを目指している。
それぞれがそれぞれにできることに向き合う。
そんな未来が融合学域からはじまるかもしれない。
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