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融合学域観光デザイン学類を目指す方へのメッセージ

2022.01.12 観光デザイン学類 受験生

観光デザイン学類長 佐無田 光 教授

新しい「観光」をデザインしよう

融合学域観光デザイン学類を目指す方へのメッセージ

 トーマス・クックが1840年代にガイドブックを発刊してから近代的な観光Tourismが始まったと言われています。
 それから約180年が経ち、現代では、移動手段やコミュニケーション・ツールが発達し、人々は手軽なデジタル・モバイルで世界中とつながっています。さらに新型コロナ・ウイルスのパンデミックを経て、私たちの生活はニュー・ノーマルへと変わりつつあります。

 「旅」の姿も大きく変わろうとしています。すでに、近代的な旅行形態とは一線を画した新しい多様なスタイルの観光が浸透しつつあります。
 名所でも何でもない普通の場所が、ストーリー次第で驚くほどの人を集める現象があります。街の神社がアニメの聖地になったり、町工場が産業観光の拠点となったり、田舎のお菓子屋さんが300万人を集客したりしています。

 「暮らすように旅する」というキャッチコピーが広まりましたが、そこからさらに進んで、今では「旅するように暮らす」選択肢が登場しています。
 あちこち移動しながら仕事をしたり、移動しながら学んだりすることができるようになりました。逆に、移動せずに、ヴァーチャルに観光地を楽しむことも可能です。
 以前は、仕事によって住む場所は限定されましたが、どこでも仕事ができるようになると、住む場所は選択的に選ばれます。環境や文化の魅力を活かした「観光まちづくり」は、地方創生に直結します。「関係人口」という概念が浸透し、定住と交流の垣根は薄れています。
 これらは、人々の暮らし方を根本的に変え、新しいサービスやビジネスを生み出すと同時に、新しい社会課題も生み出すでしょう。

 「観光」の定義もおそらく変わります。近代的観光の文脈では、観光は「非日常圏への移動」で「余暇活動の1つ」とされていましたが、いまや観光は日常化し、暮らしの一部になりつつあります。私たちは、「移動と共感を伴う多様な生活スタイル」という形で、従来よりも広い範囲で観光というものを捉えようと議論しています。
 2030年くらいまでには、次のようなことが、今よりもずっと進んでいると思われます。
 まず、地域社会のあり方として、定住者だけでなく、移動する人を含む形で地域づくりを考えないといけなくなるでしょう。観光者は、消費者というよりも参加者という性格を強め、複数の異なる地域で異なる出会いや関わりを求めます。移動して暮らす人やものの情報を、いかに的確に把握しマネジメントするかということが、社会のインフラ的な意味を持つようになるでしょう。観光全体も「スマートシステム」を前提とする観光に変わっているだろうと考えられます。

 金沢大学の観光デザイン学類では、従来型の観光のニーズに加えて(この分野も新興国の消費者の参入で市場が拡張しています)、こうした新しい観光のイノベーションを担う人材を育てたいと考えています。

 この学類の特長の1つは、文理融合型教育ということにあります。人文科学、社会科学、自然科学を組み合わせて、プロジェクトを企画・実行できる力を磨きます。これからの観光をデザインするには、数理・データ解析、デザイン力、ビジネススキルなどが必要です。その全てに精通しなくても、それぞれの専門的な役割を知って、それらを組み合わせてマネジメントする方法を学ぶことが、観光デザインの開発につながります。

 本学類のもう1つの特長は、学年の早い段階から実践的な科目を重視していることです。地域の観光プロジェクトに直接携わりながら、専門的知識と実践的知識を組み合わせて課題解決に取り組む訓練をします。
 特にここ北陸・金沢は、観光資源にあふれたフィールドです。学生たちには、この地域フィールドを十分に活用した学修をしてもらい、地域の観光イノベーションの実践者になってもらいたいと考えています。

 卒業者の進路としては、大学院進学の他、旅行業・宿泊業だけでなく、観光的な「共感」を商品企画に活かしたいと考えている各種業界の企画・分析担当、政策サイドの専門家、そして自らプロジェクトを展開する起業家など、各界のイノベーターとして活躍してもらう将来像を描いています。

 融合学域は「文理融合の知識を基にイノベーションをリードする」人材養成機関を目指しています。観光の未来をデザインしたい皆さんの参画を待っています。