古川耕太郎さん(先導学類)へのインタビュー~自分の経験と共に見出す課題解決~
2025.12.05 融合学域 先導学類 学生生活 受験生 在学生 研究者
今回は、先導学類2年生(現在休学中)古川耕太郎さんにお話を伺いました。
古川さんは、心拍からストレス値を計測した際のストレスの意味付けに着目し、リアルタイムで値によって大きさが変化する「フグ型インターフェース」を開発しています。そして、誰もが生きていてよかったと思える社会の実現に向けて動き出しています。
1.開発の経緯
元々、小学生の頃からロボコンなどに出場し、機械開発に積極的だった古川さん。一方で、高校では進路選択や学校内での探究活動の影響で行政にも興味を持ち、文系を選択したそうです。そんな中、大学受験期に自身を追い込みすぎたことによって精神的不調を感じ、ADHDと診断され、二次的にうつ状態になりました。この経験から、人はどのように自分の感情を意味付けしているのかという疑問を持ちます。そこで、たどり着いた一つの検証方法が 「環境の仕組み化」 で自身の状態との付き合い方を選べるようにしておくことでした。そして、精神状態と深い関係を持つ、ストレスを分かりやすい形で確認できる仕組みを生み出しました。客観的に状態を把握することで、精神状態との上手な付き合い方を生み出せると考えています。
《ちょっとだけ聞いてみた:スマート創成科学類ではなく先導学類を選んだのはなぜ?》
Q.小さいときからロボットや機械に興味があったのに、工学技術や理系的な課題解決を考えようとしているスマ創や理工学域ではなく、どうして先導を選んだの?
A.もちろん技術自体への魅力も理解していて、工学分野やプロトタイピングの時間も大好きなんだ。でも、僕の中で「技術は課題解決の手段である。」という印象があって、大学では技術を極めたいというよりも課題解決の仕方を学びたいと思ったんだ。その考えにマッチするのはスマート創成科学類より先導学類だなと感じて選んだよ。
2.ストレスの意味付け
ストレスの意味付けとは、一体どういうことなのでしょうか。
ストレスは、同じストレスの兆候を持っても人によって心理的受容が異なります。古川さんいわく、例えばストレスの兆候(心拍数の変化)が急激に現れた際、心理的には「挑戦」と捉える人もいれば、「不安」と捉える人もいると言ったことだそうです。「この差はどこから生まれるのか」これが古川さんの立てた主な問いです。ただ、古川さんの研究の目的は、ストレス状態そのものを測るいわゆる工学的研究ではありません。生理的な兆候がどのように解釈され、どのように行動へ繋がっていくのかという「意味が立ち上がるプロセス」を追うことに焦点があります。生体信号をセンシング1)し、アルゴリズムによって兆候を抽出し、フグ型インターフェースを通して外にそっと置くことで、本人と周囲がその変化を観察できるようにしています。ここで最も重要なことは、フグの膨らみ自体が意味を表すのではなく、生理的な変化に対し、インターフェースを確認することで本人や周囲が「気づき」を得ることができる外在化(自分自身から切り離して外に表現する)装置であるという点です。この変化がどのように解釈(意味づけ)され、それがどのように行動や関係性に影響するかを、センシング → アルゴリズム → インターフェース → 行動変容の流れの中で一貫して追っていることが、この研究の大きな特徴です。

3.現在の活躍と今後の展開
古川さんはフグ型インターフェースを持って、「学生アイデアファクトリー2025」に参加しました。このイベントは、全国の学士1、2年生対象にサマーキャンプや実際に各分野の専門家の前でプレゼンを行うことができ、自分たちの研究を研ぎ澄ますことが出来るイベントです。「ストレスは挑戦か、不安か、それとも?〜意味づけの多様性を可視化するフグ型インタフェイス〜」と題し行ったプレゼンは、高評価を得て、ファイナリスト8名に選出。最終結果としてGOLD賞(SpringNature)を獲得しました。古川さんは今後介護現場や育児の現場などコミュニケーションが取りづらい人が多い場所、生活の中でストレスを管理することが重要な現場での社会実装を視野に入れているそうです。古川さんだからこそ生み出せる温かい研究開発に期待が高まります。

