金沢大学学生留学生宿舎 北溟(ホクメイ)での暮らし

金沢大学の北溟は、全国各地から集まる学生と、さまざまな国から来た留学生が共に生活をする、まさに「小さな国際社会」ともいえる学生寮です。大学生活を送るにあたって「一人暮らし」か「寮生活」かを悩む人も多いと思いますが、私は実際に北溟寮で暮らしてみて、その魅力をたくさん感じることができました。今回は、そんな北溟寮でのリアルな暮らしについて紹介します。

まず、一人暮らしとの一番大きな違いは「すぐ近くに頼れる人がいる」という安心感です。私自身融合学域に所属していますが、同じ学域の子が他に一年生だけで2人もいます。授業以外で関わることのない他学域の学生との交流もあって、意外にも理系(フロンティア工学類や電子情報通信学類など)が多く、理数系の課題を教えてもらうこともできます。一人暮らしの場合、困ったことや悩みがあってもすぐに誰かに相談できるとは限りません。しかし、寮では日常的に友達や先輩たちと顔を合わせるので、自然と「ちょっと聞いてほしい」「一緒に考えてほしい」と話しかけやすい雰囲気があります。たとえば、料理が苦手な人も、周りに料理上手な友達がいればアドバイスをもらったり、材料をシェアしたりすることができます。また、大学の授業で困ったときも、「この課題、どうやって進めた？」と気軽に聞ける環境が整っているのは、寮ならではの強みです。私自身、入学当初は知り合いもおらず不安でしたが、寮の仲間たちのおかげで自然と大学生活に慣れていくことができました。

北溟には多くの留学生が暮らしています。アジアを中心に、ヨーロッパやアフリカなど、さまざまな国籍の学生が集まっており、寮の中では自然と国際交流が生まれます。「英語が苦手だから交流できるか不安…」と思う人もいるかもしれませんが、心配はいりません。実は私の先輩も、入寮当初はほとんど英語が話せなかったそうです。しかし、日々の会話やイベントなどを通して、半年ほどで意思疎通ができるほどに上達したといいます。机に向かって学ぶ英語ではなく、リアルなコミュニケーションを通して学ぶ言葉は、より実践的で身につきやすいのです。また、言語だけでなく文化的な価値観や習慣の違いに触れられるのも、大きな魅力のひとつです。あるとき、ラオスの留学生と話していて「ラオスで人気の男性のタイプは？」というテーマで盛り上がったことがありました。そんな会話を通じて、日本では当たり前と思っていた考え方が、他の国では全く違うことに気づかされ、視野が大きく広がった気がします。

北溟では、季節ごとのパーティーや、寮生が自主的に企画するイベントが頻繁に行われています。ハロウィンパーティーや新歓会、餃子パーティーなど、その内容はさまざま。こうしたイベントは、特に人見知りの人や、初対面での会話が苦手な人にとっても、友達づくりのきっかけになります。私も最初は緊張していましたが、イベントで同じテーブルになった人とたまたま好きな音楽の話題で盛り上がり、それがきっかけで今では一緒に旅行に行くほどの仲になりました。寮という環境だからこそ、「気が合う人」と出会いやすく、仲も深まりやすいのだと思います。また、寮生活では学年や性別を超えたつながりも自然と生まれます。先輩が後輩に勉強や生活のアドバイスをしてくれたり、男女問わずみんなでご飯を作って食べたりと、家族のような関係性が築かれるのも北溟ならではの魅力です。

もちろん、寮生活には良い面だけでなく、少し大変だと感じる点もあります。たとえば、北溟は大学の敷地内にあるわけではないので、最寄りのスーパーまでの距離がやや遠く、買い物が少し不便です。また、全員が気の合う人ばかりとは限らず、同室の相手と性格が合わなかった場合には、ストレスを感じることもあるようです。しかし、これらのデメリットも、周囲の人ときちんとコミュニケーションをとることで多くは解決できますし、それ以上に得られる経験やつながりが大きいと私は感じています。実際に暮らしてみて、「この人とは合わないかも」と思ったとしても、別の誰かとの出会いがそれを補ってくれる場面がたくさんありました。

私自身、入寮前は「ちゃんとやっていけるのかな」「変な人と一緒になったらどうしよう」と不安でいっぱいでした。でも今では、北溟寮での生活を心から楽しんでいますし、自信を持って「入ってよかった」と言えます。寮生活は、ただ住む場所を共有するだけではなく、日々の中でたくさんの学びや出会いがあります。特に北溟は、金沢大学ならではの多文化的な雰囲気と、あたたかい人間関係が魅力の場です。大学生活をもっと豊かにしたい、英語や異文化に触れてみたい、信頼できる仲間と出会いたい――そんな思いがある人には、ぜひ北溟をおすすめしたいです。新しい一歩を踏み出す場所として、きっと忘れられない時間になると思います。